姉崎裕美子さん
毎日農業賞おめでとう


さんさんでしいたけを販売している姉崎さんが
毎日新聞社主催の第33回毎日記録賞(2005年)の
優秀賞を受賞されました。
ここに姉崎さんのご好意により、
応募された原稿を掲載させていただきます。
(姉崎しいたけ園のページへのリンク)




「発信基地はしいたけ模様」 

姉崎裕美子(福井県越前町上戸)
 

  
結婚としいたけ人生
 昭和45年5月、私はしいたけの専業農家である姉崎家に嫁いで来ました。
 実家と同じ職業だったせいか、田舎暮らしがしたかったのか、夫のことが好きだったのかよく分からないのですが、何の躊躇もなく結婚してしまいました。
 結婚して最初に私が選択したことは、勤めに出るか、家の仕事を一緒にするかということでした。家族からは「勤めに行きたかったら、行ってもいいよ」と言われましたが、私は迷わずに、夫と共にしいたけの仕事をすることを選びました。私だけが一家の話題の蚊帳の外では嫌で、同じ輪の中に入りたかったのです。それからは家計も任されて、しいたけの収穫、袋詰めなどの作業を手伝いました。
 お嫁に来たときは、生しいたけ主体の周年栽培で、約3万本の原木を所有していました。
結婚2年目ぐらいから、労力も4人あるという事で、規模拡大をしていき、乾燥しいたけ部門を増やしていきました。
 現在は、約12haの森林に、6万本の原木をならべて、1年間に乾燥しいたけ約1.7トン、生しいたけ約3トンを生産しています。
 ひたすら生産するだけだった以前と比べ、現在は消費者とかかわる事で、求められていることもわかるようになりました。しいたけ粉末なども加工品として、積極的に販売するようになり、売上も増えてやる気も出てきています。

  出産と家族の絆
 小さいころから、自分の身体は頑丈と信じていた私は、妊娠三ヶ月の頃ベットを動かしたり、そのころは周年栽培だったため、生しいたけを生産するのに原木を浸水していたのですが、原木を水槽から上げようとして体ごと水槽に落ちたりして、流産してしまいました。その次もまた流産です。お医者さんからは「赤ちゃんを産むのは難しい身体です」と言われて、涙したものでした。家族の間では「跡継ぎが出来ないなんて、楽しみがないな」と話していたそうですが、「そんなことより裕美子を守っていく」と夫は言ってくれたそうです。後に、そう義母が話してくれました。まわりの人からも、「いくらいいお嫁さんでも、子供が出来んのではのお・・・」とも言われました。
 田舎の嫁は子供が産めないと1人前として見てもらえないのかという矛盾、悔しさ、むなしさを感じました。役割ってなに?とも・・・。
 その後、1年くらいの通院生活を送って私は難産ながら一男二女に恵まれました。苦労して生まれた第1子は頭の長い2300グラムの小さい女の子でした。母は「可哀相に、女の子なのに」と思ったそうです。その時、私は「可愛いでしょう」 と言ったそうです。微弱陣痛のせいで長かった頭は短くなり、丈夫な子に育ってくれました。出産するまでの寝たり起きたりしていた生活を、夫と両親はあったかく見守ってくれました。そのときから家族の絆がより深まり、私にとって真の「しいたけ人生」が始まったように思います。


  しいたけと環境
 しいたけ栽培は、原木栽培と菌床栽培の2通りの方法があります。現在では、約20年前から始まった菌床しいたけが、市場流通の主流を占めています。しかし、わが家では、栽培当初から行われてきた原木での生産を続けています。原木の伐採から収穫までの管理をすべて自分たちで行い、自然の味を消費者の方々に伝えたいという夫の信念がそうさせています。 
 また、持ち山を伐採したときは、山で拾ってきたどんぐりを植えて苗を作り、クヌギの苗木を植林しています。
 娘が小学校低学年の頃に、「私の家は地球に悪いことしているのではないの?」と質問してきました。木を切り倒しているのを見て、そう思ったのです。夫は、「老木を切り倒して山に新しい息吹を出させて、地球の環境をよくしているんだよ」と教えていました。その頃、知識に乏しい私は娘と共に、富山和子先生の「森は生きている」という本を読んで、森が地球上の空気をきれいにしていることなどがよく分かり、それまで以上に、我が家のしいたけ作りに誇りを持って取り組むことが出来るようになりました。


  直売部門とお客様とのふれあい
 結婚当初は悪くなかったしいたけ栽培も、平成に入る頃になって価格低迷の道をたどることになりました。市場出荷だけに頼っていては、生活出来なくなるだろうとの思いを強くした私たち夫婦は、以前から地域のいろいろなイベントに参加していたこともあり、次第に直売にも力を入れるようになりました。
 そして、非農家らしいお客さんには、注文のしいたけと一緒に自家野菜を入れたり、一筆箋を入れたりしているうちに心と心の結びつきが出来、お客さんから珍しい産物や手作りの品などを送ってくださるようにもなってきました。
 御礼の電話をしてその方の声をお聞きしていると、なぜか温かいものが胸の中に沸いてきて、これからも心にゆとりを持った商売をしていかなくてはと思います。
 私は、イベントへの出店や経営セミナーなどで学びながら、農家ならではの持ち味を生かした「正直」にこだわった姉崎しいたけ園にしようと、心に決めました。
 しかし、イベントなどに出始めると、乾燥しいたけしかない店では、お客さんの足が止まらないので、何かないかなと思っていました。


  しいたけアクセサリーの誕生
 そのようなときに誕生したのがしいたけアクセサリー「森のおくりもの」です。これはしいたけのかさのところが白い模様になっている「天白どんこ」の模様を活かし、ブローチやペンダント、ひもタイなどにしたものです。「これって、ブローチにいいね」と夫に話すと、「いいな」、「作ってみようかな」、「無理やろな」、「でも作りたい」、「やってみね」。
 このような言葉のやり取りがあり、アクセサリー作りに取りかかったのです。どこにもない私だけのオリジナルしいたけアクセサリー。最初は模様がうまく活かされなかったり、湿気けてカビが生えたり、虫が入ったりするものも出来て大変でしたが、湿気防止に工夫して完成の日を迎えることが出来ました。ネーミングは若草会(丹生郡の農業女性の会)のメンバーが「森のおくりもの」とつけてくれました。このアクセサリーは珍しいということでマスコミなどで取り上げられ、出会う人から「アクセサリーの姉崎さんですか?」と言われるようになりました。夫は「「姉崎裕美子の夫です。」と言わなあかんようになってもた」と笑いながら言っています。このアクセサリーは、姉崎しいたけ園の広告塔としてすばらしい活躍をしてくれています。それと同時に、私の農業
者として成長していくための道を開いてくれました。

  グリーン・ツーリズムと消費者交流
 平成10年の元旦早々です。「消費者に、しいたけの育つ環境の中で触れ合いながら、「原木栽培しいたけ」というものをわかってもらうために、森の中での体験どうかな。企画を立ててみてくれんか」と夫から言われました。私自身もお友達やお客さんがしいたけ林を訪れられたとき、「この林の奮囲気いいね。ここでしいたけを焼いて食べてみたいわ」などと言われたこともあったので、やりたいなと思っていました。お祭り好きな私が、家族や友達、普及センターを巻き込んで実行したのがその年の3月です。その時期には、冬の寒さに遭って成長した、肉質のしまった、味の濃いしいたけがありました。
 グリーン・ツーリズムが話題になり始めた頃で、どのようにやってよいかわからず大変なものがありました。普及センターに相談しながら、「しいたけ〜de〜体験交流会」ということで始まりました。体験内容は、こまうち(植菌作業)、しいたけ狩り、それを炭火で焼いて食べてもらうというものです。欲張りの私はもっと知ってもらいたいとの思いで、しいたけご飯ときのこ汁、お菓子までつけてのお食事会です。もちろん、しいたけの販売も行いました。食べると必ずお客さんは買って下さいます。売り上げがないと主催者は楽しくないので、これが続けていける原動力かなと思っています。
 これからも、出来る限り体験を続けていき消費者交流を続けながら、原木しいたけの良さをPRしていきたいと思っています。
 「今日はきのこのフルコースを召し上がれ」。しめじご飯、きのこ汁、ジャンボしいたけの陣笠煮、柿としいたけのサラダ、ナメコとナガイモの酢のもの、バラエティーきのこ天ぷらなどを昼食に、おやつには、しいたけドーナツと黒文字茶という豪華メニューです。
 参加者は、ちょっと変わった料理に興味を示され、「これっていいね」とか、「家でもやってみるわ」とおっしゃってくださいました。いろいろなきのこ料理の提案をしながら、しいたけの消費を広げて行きたいと思っている私には、何よりの言葉でした。
 私のしいたけ料理のモットーは、目立たない裏方的なしいたけを、メインディッシュとして出していくということです。香りの苦手な人には揚げ物、香りと歯ごたえを味わいたい方には煮物、リッチに食べたい人にはステーキ、寒いときにはしゃぶしゃぶ、見るのもいやな人にはしいたけ粉末を料理にパッパと入れて下さいと言っています。


  人生のお手本
 引っ込み思案だった私が積極的な人間に変化していけたのは、県内外の農業女性との巡り合い、よき指導者に出会えて課題を1つ1つクリアできたこと、パートナーが私を自由に泳がせてくれたからだと思います。
 静寂な林の中で厳寒に耐えながら少しずつ成長していくしいたけ。そうして大きくなったしいたけは肉質も締まり、奥深い本物の味を醸し出してくれます。そんなしいたけは、私にとって「人生のお手本」になっているとも言えるでしょう。







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